無題

揺れる画面に夜が霞む。街灯も、ここではめったに見ない。夕焼けも、晴天も、恋もない。親指を上下に、左右に滑らせて、わたしの輪郭を探すように淫らに。ゆめゆめ忘れてはいけないよ、あなたはいま、生きている。光るガラスに貼り付けられていて。幸福も、不幸も、明け暮れても変わらず、痛むだけ。帳尻合わせにひとを使うのが、習性になっているな。どこまで歩けばよいだろう。冬空もないのに。なにを見るのだろう。足が凍っているのに。換気扇から雨が滴って、白く濁りわたしの街の心に沈黙を強いる。曜日はかろうじてあるけれど、日付がない。臥所だけ。冷め切った幸福だけ。母の息耐える瞬間を思う。きっと乾いて冷たく、笑っている。十月の月。夜の底。これは病だろう。