Cauchemar 1

 

ほとんどまいにち悪夢を見るので、たまに憶えているときは書き留め置く。

 

さまざまな障害をかかえたひとたち。異形の顔顔顔。船の中のいたるところに。甲板から船内へ降りゲームセンターのあたり、休憩室におびただしい「数」の、それから食堂にも、階段の踊り場のベンチに。ものすごい怨みをもつ者もいると聞く。これはなんだ。どういうことなんだ。こういう種のひとたちか。帰り際に聞いた。むかしこの船で子供たちのための何かしらの体験コースを開講していた。そのときに使った薬品かなにか、子供たちを汚染し、いまの姿に変えた。子供たちは心の底からこちらを覗く。まだ記憶に新しい眼差しで。自分たちがかつて享受するはずであった未来として船の乗客たちを見る。その船は戒めとしてその子供たちを船に住まわせた。それからおよそ二五年が経つ。永久保証だった。しかし、それは僕の眼に展示のように映った。だいたい、そんなことをしてなぜ集客ができるのか。お金はある。豪華客船だから。そう思って再び視線を感じた、あの顔の溶けたような、あるいはフランシス・ベーコンの絵画のように凹凸のなくなった顔顔顔。恨みたらしくこちらを見ている。あるいはもうなにも思わずにただ食事をしている。なにを思うか。こちらの注視が痛いか。あるいはそんな人間的感情はすでに捨て去ったか。うちの家族は一日早くチェックアウトをしなければならなくなった。ロビーで言われる。基本的にそれはできません。けれどそれを許しますよ、そしてキャンセル料をいただく代わりに、客船の障害者とそちらの家族の障害者を交換してくれませんか? 客船の障害者はその後、放っておいていいですから。